インタビュー
オリジナル高性能パネル「e-panel」開発担当者インタビュー
2011年私たちは東日本大震災を経験し、家というものは人の命と財産を守らなければならないという基本的な考えに立ち返りました。私たちの大きな役割は災害に強く、災害が発生したのちの生活が守られる、そうした家づくりを目指すことです。当時すでに性能表示でいう耐震等級は3相当を実現していました。東日本大震災ではマグニチュード5以上の余震が千回以上観測されたことで、繰り返しの地震に耐える性能の必要性を感じました。制震性をプラスすることでより安全、安心な躯体を目指しました。
ファイスホームのオリジナル高性能パネル“eパネル”に粘弾性体による制振性を追加することで、揺れによってパネルが変形するときに生じるエネルギーを吸収し、熱エネルギーに変える性質を得ました。
自社試験場において実施した試験では壁倍率は最大4.0倍を計測しました。壁倍率とは耐力壁の強さを数値化したものです。数値が大きいほど地震力や風圧力に対抗する力が強く、効率的に配置することで丈夫で壁の数を少なく吹き抜けなどの広々とした空間が可能になります。
そうです。耐力壁が強いことは重要ですが、それ以上に正しい設計を行うことが重要です。家一棟の状態で性能が発揮できるかも実験しました。実験装置の上に家一棟の構造体を建てて実験をしました。実験では1995年に起きた阪神淡路大震災の揺れを再現し、本震・余震を想定した揺れを繰り返し発生させ、繰り返しの地震の影響を確認。粘弾性体による制震性が持続することを確認しました。
建物に被害が生じやすい揺れの特徴があり、阪神淡路大震災の揺れがその特徴に合致していたからです。詳しく申しますと、建物被害は地震の周期や継続時間に影響があることが分かっています。揺れの周期が1~2秒の地震動(地震によって発生する揺れ)は、木造住宅などを倒壊させやすく、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震:M7.3)では、この周期の地震動が長く発生しました。このことが木造住宅に壊滅的な被害をもたらせたと考えられます。一方東日本大震災(東北地方太平洋沖地震:M9.0)では、揺れの周期が0.2秒程度の周期の地震動が多く、地震による直接的な被害は小さく済んだと考えられます。
レジリエンス力としては3つポイントがあり、そのうちの2つについて詳しくご説明します。家族の命を守ること。もう一つは災害発生後も生活ができることです。前述のように地震発生時に建物の倒壊リスクを抑え、家族の命を守ることに加えて、災害発生後の生活を見据えていることが特徴です。
災害時には72時間の壁が重視されています。これはいくつかの理由がありますが、水、ガス、電気といったライフラインの復旧や支援物資の到着に概ね3日かかると言われていることからです。どんなに地震に耐える家であっても災害後のライフラインが途絶した状態では生活が困難です。避難所へ身を寄せるという選択肢もありますが、プライベートが確保できる自宅での生活が送れるのであればその方がストレスを軽減でき心理的には楽かもしれません。そうした観点からライフラインの途絶に対応した備えをもった住宅をご提案しています。
非常用の食料やガスカートリッジを利用したガスコンロなどライフラインが復旧するまでに必要な備品を確保する十分なスペースを日常の生活スペース内に分散して配することで日常使いをしながら行える“ながら備蓄”を無理なく取り入れられます。
人に地球にやさしいという環境配慮を主にeパネルの開発を行ってきましたが、私たちを取り巻く環境は変化しつづけています。自然災害、社会的災害に直面した時、私たちの社会システムは途端におかしくなります。行政サービスに依存するだけでなく、一人一人が備えを行う時代になったと思います。半面リスクに対する投資に消極的なことも事実でしょう。後から足すのではなく、住宅購入時に備わっている住宅性能であることが私たちの大きな役割だと思います。時代時代に沿ってしなやかに回復させる力を備えた住宅を開発、提供してまいります。
オリジナル高性能パネル「e-panel」
開発担当者