インタビュー
アリエッタ商品開発担当者インタビュー
そうですよね、少し専門的な響きかもしれません。でも、実はその逆なんです。パッシブデザインとは、エアコンや照明などの機械に頼り切るのではなく、太陽の光や熱、そして通り抜ける風といった「自然の恵み」を、建物の工夫だけで最大限に活用する設計のことです。
私たちはこれを、単なる省エネ手法ではなく、「五感を慈しむためのデザイン」だと考えています。
たとえば、休日の昼下がり、窓を開けたときにふっと頬を撫でる「風の気持ちよさ」です。ただ風が通るだけでなく、その土地の風の道を読み解いて設計することで、木々の香りを運んでくるような心地よい揺らぎが生まれます。
また、冬の晴れた日にリビングへ差し込む「太陽のぬくもり」。床に落ちた陽だまりが素足にじんわり温かい・・・。あの、なんとも言えない多幸感は、機械の暖房では決して味わえない、パッシブデザインならではの価値ですね。
もちろんです。一番分かりやすいのは、「お布団を干したときの太陽の香り」ではないでしょうか。
パッシブデザインの家では、日射を遮るだけではなく、取り込むべき場所にバルコニーやランドリールームを配置することがあります。太陽の光をたっぷり浴びて、ふかふかになったお布団に顔を埋めたときの、あの清潔で懐かしい香り。それは効率化だけを求めた暮らしではこぼれ落ちてしまう、小さな、でも確かな幸せだと思うんです。


その通りです。高気密・高断熱という「守り」の性能を固めた上で、パッシブデザインという「開き」の設計を加える。そうすることで、家の中にいながらにして四季の移ろいを感じられます。
「今日は風が涼しいから窓を開けよう」「夕焼けが綺麗だから照明を少し落とそう」といった、自然のリズムと呼吸を合わせる感覚。それが、住む人の心を豊かにし、愛着を持って長く住み継がれる家へとつながっていくのだと信じています。
私たちは、家の中にいながら「自然の心地よいリズム」に包まれる設計を大切にしています。たとえば、リビングに設けた大きな開口部から見える庭の木々。風に揺れる葉の音や、水盤に広がる小さなさざ波・・・これらには「1/fのゆらぎ」という、人の心を深いリラックスへ導く波長が含まれています。
パッシブデザインで「風の道」を計算すると、単に空気が入れ替わるだけでなく、カーテンの緩やかな揺れや、風が運ぶかすかな音までが室内の演出になります。「ファイヤーピット」という本物の炎に触れる空間を提案したこともこの一つです。炎のゆらぎを眺めながら、外の自然と一体になる。耳から、目から、五感を通して脳が解きほぐされていくような時間は、究極の贅沢ですね。
サウナを単なる「嗜好品」として作るのではなく、「整う(ととのう)」ためのプロセス全体を自然と繋げるのが、私たちの提案です。
断熱性能の高いパッシブデザインの家は、冬場でも浴室や脱衣所の温度差が少ないため、体への負担を抑えつつサウナを楽しめます。そして何より、サウナ後の「外気浴」です。パッシブデザインで導かれた心地よい自然風が吹き抜けるウッドデッキやテラス。そこで火照った体を冷ましながら、太陽の残り香や夜風の冷たさを肌で感じる・・・。
機械的な空調では決して再現できない、外気と呼吸を合わせる感覚こそが、自宅サウナを最高の癒やしに変えてくれます。


大いにあります。趣味の空間には、集中力とリラックスの絶妙なバランスが必要ですよね。たとえば、書斎やアトリエにおいて、パッシブデザインは「安定した自然光」を提供します。
直射日光の眩しさではなく、季節や時間帯によって計算された優しい北側の光や、高窓からの柔らかな光。こうした「質の高い光」は、読書や創作活動において、目への負担を減らし、没頭感を高めてくれます。また、自然由来の素材を用いた壁や床が、太陽の熱をじっくり蓄えて放射する効果も期待できす。温度を一定に保つ高気密高断熱住宅ですから足元が冷えずに冬でも趣味に集中できる。
単なる「個室」を作るのではなく、自然の恵みを借りて、心から好きなことに浸れる「心地よい器」を作ることが私たちのパッシブデザインなんです。設計の工夫で暮らし方に影響が与えられることがあると思います。


よく「庭やバルコニーを作ったけれど、結局使わなくなった」というお話を聞きますよね。それは、住む人のせいではなく、実は設計に「出にくさ」があるからなんです。段差が高い、あるいはキッチンから庭が見えないといった物理的・心理的な距離が、外への意欲を削いでしまいます。だからこそ、私たちは「思わず外に出たくなる仕掛け」を大切にしています。たとえば、南向きのキッチンのすぐ先に、室内と高さを合わせたウッドデッキを設ける。料理の合間にふと目を上げれば、四季折々の庭の景色が飛び込んでくる。そうすることで、心理的なハードルが下がり、「ちょっと外でコーヒーを飲もうかな」という自然な行動が生まれるんです。
その通りです。パッシブデザインの真の力は、住む人が自然の恵みに気づき、それをお裾分けしてもらう「アクション」を起こしたときに最大化されます。
冬の晴れた日、いつも閉めているレースのカーテンを思い切って開けてみる。それだけで、太陽の圧倒的な熱が室内を満たすことに気づくはずです。「カーテンを開けるとこんなに温かいんだ」という発見があれば、翌日も、その次も、自然とカーテンを開けるようになりますよね。
パッシブデザインとは、建物だけで完結するものではありません。住む人が楽しみながら自然と呼吸を合わせることで、気づかないうちに心地よい暮らしが形づくられていく。そんな「人と自然の幸せな関係」をデザインしているんです。
そう感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。実を言うと、私たちは「パッシブデザイン」という設計思想に、もう一つ欠かせない要素を加えて考えています。それは、そこで毎日を過ごす「暮らす人」という存在です。
どんなに緻密に風の道を計算し、太陽の光をコントロールしても、それ自体が目的なのではありません。すべては、そこに住む方が「今日の風は気持ちがいいね」と窓を開けたり、陽だまりでまどろんだり、趣味に没頭してふっと顔を上げたときに季節の移ろいに気づいたり・・・そんな心震える瞬間を生むためにあるのです。
家は、完成したときがゴールではありません。私たちがご提案しているのは、自然の恵みという舞台装置。そこに、生活者の皆さんの五感が加わり、日々の喜びが積み重なっていくことで、初めてその家は真の「パッシブデザインの家」として完成します。
性能や数字を超えた先にある、お一人おひとりの豊かな人生。その舞台を、皆さまと一緒に描いていけることが、私たちの何よりの願いです。